遺産分割遺産を相続人が受け取るためには、遺産分割協議をし、全員同意の上で分割方法を決定する必要がありますが、たとえば、相続人のうちに行方不明者がおり、協議に参加できないような場合は、遺産を分割することができなくなるのでしょうか?答えはそのとおりです。遺産分割はそこでストップしてしまいます。
しかし、それでは遺産をいつまで経っても分割できないということになりますので、家庭裁判所の審判を受けることにより、遺産分割を可能とする方法が認められています。
これには二通りの方法があり、一つは「不在者財産管理人の申立」という方法、もうひとつは「失踪宣告」という方法です。「不在者財産管理人の申立」は、不在者が生存していることを前提とした手続きで、「失踪宣告」は不在者が死亡していることを前提とした手続きです。
「不在者財産管理人の申立」とは、家庭裁判所に「不在者」の財産を管理する人を選んだことを、認めてもらう手続きのことをいいます。家庭裁判所に申し立てることにより、不在者財産管理人が選任された場合は、別途、家庭裁判所の許可を得て、行方不明の相続人の代理人として遺産分割協議に参加することができるようになり、遺産分割協議が可能となります。ただし、不在の相続人が「まったく財産を相続できない」「負債を負わされる」などの、一方的不利になるような協議を行うことはできず、不在者の法定相続分は確保されるような取扱いになっております。
もうひとつの「失踪宣告」手続きは、相続人がずっと行方不明で、死亡している可能性が高いと思われる場合に、家庭裁判所に申立てる方法です。失踪宣告の申立ては、他の相続人、その他の家族などが請求することができます。失踪宣告が認められれば、その不在者は法律的に死亡したとみなされます。ただし、失踪宣告を受けたものが生存しており、生存していたことを家庭裁判所に報告できるような場合は、失踪宣告の取り消しをする必要があります。では、その失踪宣告が取り消された場合は、相続手続きをやりなおす必要があるのでしょうか?法律の世界では、そのような法律関係を複雑化するようなことは認められておらず、失踪宣告による法律関係は既に確定しているため、相続を最初からやり直す必要はありません。
「不在者財産管理人の申立」は、少なくとも3ヶ月以上、「失踪宣告」については、1年以上の期間を要することがほとんどです。ご自身の親族関係に思い当たることがあれば、ぜひお早めに、当HPまでご相談ください。